わが国のう蝕の罹患状況を検証してみますと、平成29年度学校保健統計調査速報によると、わが国の12歳児の平均DMFTは0.82本であり、顕著な予防効果が示されています。ただし、このような数字に表れる小児のう蝕の減少を、単純に国全体のう蝕が減少しているとは言いがたい状況があることも報告されています。

まず、小児のう蝕については、う窩が氾濫していた40~50年前とは状況は異なり、う蝕はリスクの高い子供に偏在するようになっています。そのう蝕の偏在には、養育者の収入などに代表される、社会経済的要因が関わっていることも示されています。

一方、良好にう蝕がコントロールされていた学童が、学校保健の枠組みを外れる青少年期にう蝕が急増する傾向は、残念ながら過去25年間大きな改善がみられません。そして成人するまでに”drill, fill and bill” (削って、填めて、チャージする)という、旧来の過剰な切削・修復がなされてしまうケースも依然として見受けられるのが実態です。

また、超高齢社会において、近年の8020運動に代表される取組みや、高齢者自身の健康意識の高まりによって、残存歯数は着実に増加してきました。しかし、歯周治療後などに露出した根面のう蝕が顕著に増加していることは見過ごせない問題になってきました。

このような、わが国のう蝕に関わる問題を解決すると同時に、現在までに達成されてきたう蝕予防の成果を、国際的組織であるACFFに参画しながら世界に発信することを目的として、2018年2月4日に一般社団法人ACFF日本支部が発足しました。ACFF日本支部は、林 美加子(大阪大)が理事長を務め、花田信弘教授(鶴見大)が副理事長、柘植紳平先生(岐阜県開業)を理事、そして桃井保子教授(鶴見大)を監事という布陣にて、ACFF GlobalからPitts教授を招いて設立総会・シンポジウムを開催しました。そして、ACFF 日本支部の活動趣旨に賛同された約50名の臨床医に一般社団法人の「正会員」として登録していただき、スタートを切りました。